瀬越憲作 囲碁哲学

1. 芸に当たりては師に譲らざる意、碁において最も存すべし。

芸事においては、師匠に遠慮せず、自分の力を尽くす気概が大切だ。囲碁でもそれは特に重要である。

 

2. 勝ちも以て貶すべき碁あり、負けるも、以て賞すべき碁あり。

勝った碁でも内容が悪ければ反省すべきだし、負けた碁でも立派な内容なら称賛に値する。

 

3. 勘は経験の蓄積なり。

直観(勘)とは、積み重ねた経験の中から生まれるものである。

 

4. 敵の心になって考えよ。

相手の立場になって考えよ。相手の意図を読むことが勝負の鍵となる。

 

5. 急功を求むる時は危うし。

早く結果を出そうと焦ると、かえって危険な目にあう。

 

6. 形勢の上に勝つことを心掛けよ。

常に、形勢で優位に立つよう努めよ。

 

7. 既に役を畢えば石を惜しむべからず。

すでに役目を終えた石は、惜しまずに捨てる勇気が必要である。

 

8. 敵を攻めて己れの地を作るは大得なり。

相手を攻めながら、自分の地を作れるなら、それは非常に価値ある打ち方だ。

 

9. 中押しの負といえども、その謂れあるは咎むべからず、一目の負といえども、その謂れなきは許すべからず。

中押しで負けても、その理由がはっきりしていれば責められるべきではない。一方、一目差で負けたとしても、内容が悪ければ許されない。

 

10. 既に之を好む、宜しくこれを学ぶべし。既に之を学ぶ、よろしく之を究むべし。之を究めんとする、宜しく深く慮るべし。

すでに碁が好きなら、きちんと学ぶべきだ。学ぶからには、徹底して深めるべきだ。深く極めようと思うなら、真剣に考える必要がある。

 

11. 理の極、妙の致は師もこれを授くること能わず、弟子も受くること能わず、常習の際、自然に自得するを要す。

理論の究極や妙手の境地は、師匠が教えることも、弟子が受け取ることもできない。日々の修練の中で、自然とみにつけていくものである。

 

12. 碁局は死物なれども之を打つは人に在り、人これを打ちて動静進止の間変化百出す、碁の活機活方茲においてか存す。

碁盤そのものは動かないが、打つのは生きた人間である。人の手で一手一手が打たれることで、局面は目まぐるしく変化し、そこに碁の生きた面白さがある。

 

13. 碁は肉眼を以て見ることなく、能く心眼を開きて洞察すべし。

碁は目で見るだけでは本質がつかめない。心の目を開いて、全体を深く見通す力が求められる。

 

14. 碁道は一著の優を貴びて貪婪飽く無きを許さず。

碁道は、一手一手の質を大切にし、欲をかいてはならない。貪欲に陥ってはいけない。

 

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